6月上旬、ネパールのマタティルタ(Matatirtha)村を訪問しました。カトマンズの南西にある村で、今年2月に続いて2回目の訪問となります。
今回の訪問でも、カトマンズのソーシャル・ベンチャーのBihaniが現地の方との連絡、交通の手配などのコーディネートをしてくださいました。
2月の訪問時、女性グループ(Mahila Samuha)のメンバーとお会いして、IbashoとBihaniが連携することで、何らかのサポートをすることが可能かどうかについて意見交換しました。ここで言うサポートというのは金銭や物資の支援をしたり、一方的な技術支援をするものではありません。女性グループや高齢者を中心とする地域の人々が主体となる活動のサポートです。
その後、地域の人も何らかの活動を始めたいという意志があるということで、今回、マタティルタ村を再訪することとしました。
今回の訪問の目的は、活動の柱となるIbashoの8理念を伝えること、マタティルタ村にはどのような問題があるかを共有すること、それをふまえて、実際にどのような活動ができるか考えるためのきっかけにすることです。
2016年6月6日(月)、村にある高齢者住宅(Matatirtha Oldage Home)の部屋で1日目のワークショップを開催しました。
この高齢者住宅は、村の女性グループのメンバーもボランティアで運営のお手伝いをされているとのこと。
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午前のワークショップには女性グループや高齢者など28人(男性7人、女性21人)の住民が参加。最初に大船渡の「居場所ハウス」、フィリピンのバゴング・ブハイでのIbashoフィリピンの活動を写真で紹介しながら、Ibashoの8理念を紹介していきました。
住民の方々は静かに写真を見ておられましたが、特にIbashoフィリピンのメンバーが、拠点となる建物がない中で、ペットボトルのリサイクル、農園、モバイル・カフェという自分たちにできることを進めている姿を見て、次第に、色々な意見が出されるようになりました。「自分たちにも何かできそうだ」という思いを抱かれたのかもしれません。
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昼食を挟んで午後のワークショップがスタート。午後のワークショップには男性4人、女性13人が参加。
まず、村にどのような問題があるかをあげてもらいました。あげられたのは、
- あらゆる世代の失業、マレーシアやカタールなど海外への出稼ぎ、資金がないため新しいことを始めることができない、商品を販売する市場がない、仲介人にマージンを取られることなくどうやって商品を流通させるかなど、生業や経済に関する問題
- 教育の欠如、害虫駆除などの専門的知識の欠如、新しいスキルを身に付ける必要性など、教育や技術に関する問題
- アルコール依存、ジェンダーの問題、健康の重要性に対する意識の欠如など、暮らしに対する問題
- 仮設住宅に住んでいる人がいる、豊かなスキルがあるがそれをいかすことができないなど、高齢者に関する問題
など多岐にわたりました。ワークショップの様子を見ていると、主に男性が生業や経済に対する問題をあげておられたように思います。もちろんこれは切実は問題ですが、市場に関する問題は広がりのある大きな問題であり、自分たちが具体的にできることを見つけるのは難しい。まずは自分たちができる具体的な活動を重ねていくことが大切だということを伝えました。
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そして、3〜4人ずつ4グループに分かれてもらい、グループごとに割り当てられたテーマ(アルコール依存、教育の欠如、スキルを持つ高齢者が活躍できない、ジェンダーの問題)について、具体的に何ができるかを絵に描いてもらいました。
中心になって絵を描く人がいるグループ、なかなか手が動かないグループがありましたが、最後にはどのグループも絵を仕上げ、順番に内容を発表していきました。意見を出し合うだけだと、どうしても声の大きな人が目立ってしまいます。それに対して絵を描くのであれば、あまり発言しない人も貢献でき、少しの貢献であっても絵として残るという意味で、絵を描くのはよかったと感じました。
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この日のワークショップの最大の目的は、地域の方々が、具体的な活動を始めるという意志を共有すること。
そのためには、自分たちには手も足も出せない大きな問題ではなく、自分たちの具体的な活動により少しでも変化を起こせる可能性がある問題に注目し、小さな活動を積み重ねていくことが重要です。
ここで大事なのは、これらの小さな活動が、市場や出稼ぎなどの大きな問題とどこかでつながっているということ。小さな活動を積み重ねることで、大きな問題に対しても何らかの変化をもたらせる可能性がある。だからこそ、まずは小さくても、具体的な活動を積み重ねていくことが重要なのだと思います。